iZotope Blogより『宅録の聴音環境を向上させる10つの解決方法』を要約/解釈してみる

iZotope Blogより『宅録の聴音環境を向上させる10つの解決方法』を要約/解釈してみる
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御馴染みミックス・プラグインメーカーの

iZotope Blogより、再び独自に紹介させて頂きます。

 

原文:

10 Home Recording Studio Hacks to Improve Listening

『宅録環境の聴音力を向上させる10つの解決方法』

筆者:

iZotope Contributor / Griffin Brown

 

以下、文章をこのように表現します。

記号なし(黒文字) … 記事の要約

記号なし(青文字) … 個人意見や訳注

“○○” … 原文からの引用

『 』… 翻訳

 

序章

音楽制作とミキシングについて

語られがちな内容としては主に4点。

DAW、プラグイン、スピーカー、MIDIコントローラ。

しかし、宅録(= Home Recording Studio)の内部環境に

ついて、重要と考えられることはわずかです。

 

音楽制作者がどのような環境で音を聞いて作るか、

正確な聴音環境であるかを知るのは重要です。

 

1. 室内での聴音ポジションを最適化する

まずは今いる環境の中で、正しい位置から

聴音が出来ているかを確認しましょう。

音波は壁から壁への跳ね返りがあるため

場所による聴音精度の良し悪しがあります。

 

音波の反射を容易に予測できるものとして、

理想的、一般的な部屋の形は

下図のように矩形です。

 

そして理想的なポジションは

短辺の壁の1つに向かい、

両端から等しい距離に位置する事。

一般的に作業者の椅子の位置は

正面から部屋の1/3の距離となります。

2. モニタースピーカーの位置を最適化する

モニタースピーカー(以下、モニター)の

位置づけについてはiZotopeの別記事で

掲載されています。

※別の機会に本ブログで取り上げたいです。

Types of Studio Monitors and Which to Choose for Home Studios

『スタジオモニターの種類とホームスタジオ向けモニターの選別』

作業者とモニターの位置は正三角形に

なるようにする事が理想的です。

また、ポイントとして

モニターの位置は耳の高さと同じである事。

そして部屋の角に近づけすぎない事が重要

部屋の角では音波が表面2点、時には3点で

音の反射が起こるため、不正確な低域の応答が

発生し、低域のアンバランスを起こします。

 

3. デスクの振動を最小にする

音を吸収、反射するのは壁だけではなく、

部屋の全ての表面が対象です。

一番距離の近い物では、

作業机がそれにあたります。

 

ホームスタジオでよくある誤りが

モニター用スピーカーを

そのまま机に置く事です。

そこから出た音は机の中を振動/移動し、

ミックスにない人工的な共鳴音が

生まれる原因となります。

 

解決策ですが…。

アイソレーションパットや発泡スチロール

モニターの底面に敷いて、振動を和らげる事。

しかしこれでもゼロ振動とは言えないので、

最も良い方法はスタンドを別途用意して、

床に振動を流した上で、モニターの高さを

調整する方法を取る事です。

 

4. 表面の材質に注意を払う

室内に存在する物の材質には

気を付けましょう。特定の材質は

他の物よりも反射性に優れる事があり、

より多くの音を吸収します。

1つ1つの、均斉でない音の吸収率が

室内の周波数特性を人工的に乱す

原因となります。

 

その主となる例は窓ガラスです。

“理想的には”出来るだけ少ない方が良い。

窓を減らすという事がそもそも難しい場合でも

窓にカバーをする等の対処がベターです。

 

一方、布地の材料は音波の吸収に良い

カーペット、毛布、マットレスを

DIY吸音材として利用し、一定の吸音性を

保つ事も可能です。

 

低周波については厚い吸音材でなければ

通り抜けることがしばしばあります。

密度の高い織物、布製の家具等が

低音の積み上げを防ぎます。

 

5. 定常波に注意する

定常波⇒Wikipediaページ(リンクあり)

 

音波は周波数に応じた特定の波長を有します。

波長とは音波の1周期間の距離です。

例えば100Hz音波の場合ですと

約11.3フィート = 約344.42…センチメートルの

波長を有します。

つまり、100Hzの音波は

344.42cm先にある壁にぶつかると

元の波と一致した反射をするため、

振幅が大きくなるという事になります。

 

※ここでの定常波が起こす問題は

部屋の寸法に基づいた、一般的には波長の長い

300Hz以下の特定の周波数の増加する事を指します。

 

例えば100Hzの定常波が存在する部屋で

ミックスをしたがために、作業者は

100Hzの音域を抑えて他を底上げするでしょう。

よって、別環境にいる他の聞き手には

100Hz付近が控えめに聞こえる事になります。

定常波はどんな部屋にも存在し、

避けられないものです。

 

主な定常波は、3つの主軸から生まれます。

前後の壁の間、左右の壁の間、天井と床の間

これはアキシャルモード(= Axial Modes)

呼ばれています。

これらの共鳴が全て、

特定の周波数スペクトルでなく

オクターブに亘って為される必要があります。

 

部屋の定常波周波数は下記の式で

計算が可能です。

 

定常波(Hz) = 1130/2x

x = 部屋の寸法 (アキシャルモード3点の長さ)

 

※ここでの1130とは上の音速11.3フィートを

指し、それを利用した計算方法となります。

日本では音速340m/sを利用して

計算を行う方法が一般的と思われます。

natuchさんのこちらのページ(リンクあり)

計算方法が分かりやすかったです。

 

6. 吸音材の取り付け

1~5が正しい状態である事を確認すれば

吸音材の取り付けに移ります。

主な吸音材は3種類です。

吸音パネル、ディフューザ、ベーストラップ

部屋全てを覆う必要はなく、

全体の30%~40%で上手くいくはずです。

 

– 吸音パネル

一般的には中高周波の吸収に用いられます。

ロックウールからガラス繊維等、

素材は様々です。

音波による吸収材の振動(運動エネルギー)を

熱に変換する事によってはたらくとの事です。

直接サウンドに干渉する共鳴を作り出すような

Early Reflection (=参考サイト)を制御します。

主な吸音パネルの位置は

作業者の背面壁と両側面です。

そして効果的な箇所の確認の仕方があります。

 

1人が作業ポジションに座り、

もう1人は鏡を持ち

相手に鏡を向けながら向かい合います。

鏡を持つ側はそのまま壁伝いに移動します。

そして作業ポジション側は

鏡に合わせて首を動かします。

いずれ鏡にモニターが映る箇所が

確認できるでしょう。

そこがスピーカーの第1反射箇所です。

 

なお吸音パネルはドレープやカーテンのような

布地の素材でも吸音材として代用可能です。

 

– ディフューザ

吸音パネルと似ていますが、原理は違います。

 

ディフューザは木材のように硬い材質で

作られ、不均一な形をしています。

これが部屋全体に

中高音域の音波を散らすのです。

これによりミックスに自然な音を保ちつつ

反射を最小限にする事が出来ます。

 

経験則では前壁、すなわち机の後ろを

『デッドエンド』

後壁を『ライブエンド』とする事です。

よってデッドエンドに吸音材

ライブエンドにディフューザを取り付けます。

 

※”Dead End Live End”とは

『デッドエンド/ライブエンド』とは

参考サイト

 

ディフューザが用意できない場合は

硬い表面を持つ家具、本棚等が

音波散乱を起こし、

デフューザの役割を持ちますが

専用ディフューザの方がより理想的です。

 

– ベーストラップ

中高音域の制御をする吸音パネルと

ディフューザに対して、

ベーストラップは低音域の

共鳴とディケイの制御を行います。

一般には高密度の吸収性素材で

作られています。

 

理想は後壁のに沿って配置させる事です。

また、波長が長いためモニターから

十分な距離を取る事、壁、床、天井同士が

重なる、部屋の角に設置する事が重要です。

 

ベーストラップの代替品は高密度の家具、

ソファやマットレスがそれにあたります。

 

7. 床や天井も忘れずに

床や天井もそれぞれ音を反響させる

壁として認識する事が大事です。

 

床は音を吸収しすぎないように

全面カーペット敷きにするよりも

聴音ポジションの下にだけカーペット

敷くような方法が最善です。

 

天井は聴音ポジション上の処理だけでも

賄えます。代表的な方法は

セーリングクラウドを直接取り付け、

または吊り下げる事が挙げられます。

 

 

可能であれば、厚さ12 inch = 約30.5 cmの

吸音材で天井を全て覆う事も良いとされます。

 

8. 音響補正ソフトウェア/ハードウェアを使う

スタジオ補正ソフトの導入も効果的です。

音響処理作業では音がスピーカーから出た後の

オーディオの問題を対処しますが、

この補正ソフトウェア/ハードウェアでは

部屋の音響を補正する事を目的に

モニターから音が出る前に処理を施します。

 

一般的には3つのステップで動作します。

1. テストトーン再生、反響音の収集

2. 周波数を検知、聴音の問題点を特定

3. 特定の帯域の減退/増幅、最終プレイバック音へ適用

 

じゃあこれさえあれば、

部屋の音響なんて気にしなくてもいい?

残念ながらそうではありません。

 

このシステムは周波数問題、とりわけ

部屋の音響に影響を及ぼしやすい、

低周波域の問題点しか解決できません。

 

タイムドメイン問題、シグナルが耳に

到達するまでの時間領域問題、

例えば部屋の残響などの問題は

この補正では解決する事はできません

 

室内の実際の補正と組み合わせる事で、

理想的な聴音環境、特性が作られているかを

確認する必要があります。

 

以下は音響補正用ソフト/ハードの一例です。

IK Multimedia ARC 2.0

Trinnov Optimizer (タイムドメイン問題の解決も可能)

JBL MSC1

9. 機器のアップグレード

機器を最新の状態にアップグレードする事は

常に環境の改善に役立ちます。

新しいモニター、ケーブル、I/Oへの投資…

長期的な価値に繋がります。

オンラインの膨大な情報を参考にしながら

わずかな投資で効果的な施策を取りましょう。

 

10. プロを雇う

どれもこれも自分の力でダメな場合は、

予算がある場合、

専門的な助言をプロに求めましょう。

 

要約後記

もうほぼ翻訳に近いレベルの量で

書いてしまいました…。

 

個人の意見では、

宅録では主にモニターヘッドホンによる

一連の作業がなされがちですが、

スピーカーにより発される音を聴いての作業も

定位や周波数バランスの観点から重要だと考えます。

 

もし室内環境の整理にご興味のある方は、

上述のように投資や材料の導入を行う前に、

1度自分がどの位置で作業しているのか、

どんな環境で作業を行っているかを

少し立ち止まって考えるのが最善です。

 

その時にこの記事をご活用頂ければ幸いです。

何度もご紹介をしておりますが、

iZotopeブログ、かなり有用な情報群です。

記事原文

翻訳ツール等を活用しながらでも良いので、

是非アクセスして読んでみてください。

 

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